終わっていない人種差別

お誕生日祝いのチョコレートを持ってマリーの家に行くと、彼女の巨大スクリーンのテレビではジンマーマン裁判の無罪に怒る政治家や市民権活動のグループが懸命に訴えていた。

彼女のお誕生日がこれでは祝っているわけにもいかない。マリーは悲しげにつぶやく。
「黒人差別は終わってないし、何も変わってないのよ。」

彼女のチョコレート色の肌がフロリダの昼下がりの日差しにまぶしいほど輝いている。
自分のルーツに誇りをもって生きる彼女は美しい。ゆえに彼女の怒りははかりしれない。

ジンマーマン裁判は、単純に言うと、白人の若い男が黒人の若い男を不審として銃で撃って殺した事件。ここで裁判の論点になったのは、
>黒人の若い男はただ普通に歩いていただけで、被告は黒人を見たら不審と決め付けて殺したのではないか、ということ。それはただの人種差別の殺人として許されるべきでない。
>被告側としては、正当防衛であり、事件のあったここフロリダ州は正当防衛を大きく認める州であるということ。
>陪審員が全員白人。そんな偏った選考で人種差別が関わる裁判の判決がくだされていいのか。

細かい点は無数に語られ、今や私の情報量ではすまないのですが、私の理解の範囲は以上でした。

「だからね、黒人でいるって大変な事なのよ。息子にいつも言いきかせてきたわ。とにかく不当な扱いをうけるようにできているんだから、防御を高くして生きていきなさい、って。」

もし私にコドモがいたら、言うだろうか。
「だからね、日本人でいるって大変な事なのよ。悪い扱いをうけるようにできているんだから、、、」って。
悪い扱いを受けたことのない私はぼんやりと、マリーの顔を見た。

誕生日プレゼントに彼女をスパに招待して、
サウナに入って、フェイシャルをして楽しい時間はあっという間に過ぎ、
帰りのカーラジオがまた裁判のニュース。
「I’m sick of it!  もううんざりだわ。」
アメリカの人種差別、、、
受けたものにしかわからない怒りが車の中にあふれだし、
窓を開くとフロリダの亜熱帯の夜風がいつになく冷たかった。

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