ストーリースラム★ハートがいっぱい

story slam


ストーリーテラーが肩書きの私ですので、
お話を語るわけです。

パフォーマンスやマイムを始めて、ひょうたんからこま、でストーリーテリングの世界に入り、ショーの仕事が入リシメシメと生計をたて、なりゆきでここまできたとはいえ、、、やっぱりすごく好きできました。食べること、寝ること、が好きなのと同じように、説明できないような「好き」です。

好きなのは文章を書くことも同じくらい好きで、
起承転結、構築、完成度、のないお話ですら、
即興のおもしろさがあってええやん、って思ってしまう。
で、ストーリースラムってカテゴリーをこのブログに入れて、
自作のめちゃ短い即興ストーリーの数々を、
バナナの叩き売りみたいに、通り過ぎる人に押し売りです。いひひ。

では、おはなし いきます。

「ハートがいっぱい」

ほんの少し昔、あるところに服が大好きな娘がいた。
少しでもお金がたまると、町を歩き、好きな服を買い、華やいだ気持ちを楽しんでいた。服に恋して、夢中になって、仕事にして、それでも足りないくらい好きだった。縫い目の先の先のほうまで丁寧に仕上げ、ボタンは布かけたところがゆるすぎず、それでいてしわにならないように。肩のラインはしなやかに、そでぐりはまきつかず流動のラインを。柄はデザインをひきたて、デザインは素材と舞うように、素材は服のTPOと和をなすように。無限の可能性をもつ人間のために、無限の可能性の服を。そして美しさを。
家族や友人は彼女の狂ったような服への渾身を心配した。たかが服、なのに。彼女にとっては、されど服。おいしい物を食べて幸せな気持ちになるのと同じように、素晴らしい服を着て心ときめくことが幸せをよぶことを信じていた。それが彼女の世界への帰依だと信じていた。

cloth love

cloth heart3

寝ても覚めても服のことばかりで年老いたある日、彼女はひっそりと誰にも知らない場所で逝ってしまった。彼女のスタジオには彼女の普段着だったジャケットがボディにかかっていた。見えない内側にはきめの細かい絹の裏打ちでハートがいっぱいだった。




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